アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」思春期特有の衝動と思いが交錯する新生ガールズバンド・MyGO!!!!!のススメ

アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」が、TOKYO MXほかで放送中だ。同作はメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」シリーズの新作アニメ。5人組ガールズバンド・MyGO!!!!!(マイゴ)の結成から成長までが、シリーズのこれまでとは一線を画すシリアスかつリアルな描写とともに描かれる。本記事では、そんな「It's MyGO!!!!!」の見どころを深堀り。すでに視聴している人もこれから観ようとしている人も、さらなる盛り上がりを見せる本編後半への足がかりとしてほしい。

少女たちの叫びと、関係性の行方──
迷子な少女たちを描く物語の鮮やかさ

文 / 太田祥暉(TARKUS)

物語の軸となるのは「少女たちが感情を吐露すること」

少女が感情を吐露する瞬間に惹かれたことがある方は少なくないだろう……と私は思う。例えば同じ男子を好きになった女子2人がいるという三角関係の構図。振り返ってもらうためにヒロイン2人はさまざまな手段でアプローチをかけていくが、その過程ではキャラクターの素が垣間見えるような、感情の吐露が生じてくる。思いを伝えてどちらかが付き合ったとするならば、いわゆる負けヒロインはこれまで抑えていた思いを吐き出すか、堪えるのか、どちらかの選択を余儀なくされる。そこで描かれるそのキャラクターにとって最もパーソナルな部分に、私は惹かれてならないのだ。「true tears」や「青い花」、「凪のあすから」、「荒ぶる季節の乙女どもよ。」など、好きになる作品の一端にはそんな要素があったように感じる。

「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」より。

「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」より。

なぜ私がこんな話をしているのかと言えば、まさしく「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」はそういった作品だったからだ。「It's MyGO!!!!!」はメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」シリーズの1作であり、これまで放送・公開されてきた作品と世界観を共有している。少女たちがバンドを組み、成長していく。それが主題であることは先行作品と変わらないが、明らかに異なるポイントとして「少女たちが感情を吐露すること」を物語の軸にしている点がある。

自分たちと同じような悩みを抱えるキャラクターたち

物語を牽引するのは、5人の迷える少女たちだ。とある事情によってゴールデンウイーク前に羽丘女子学園に遅れて入学することとなった千早愛音ちはやあのんは、クラスメイトで独特の雰囲気を漂わせている高松燈たかまつともりと出会う。羽丘女子学園ではバンド活動が盛んなため、愛音は自分もバンドを結成しようと躍起になり、そのメンバーとして燈を誘う。しかし、そこで燈から返された「一生、バンドしてくれる?」という言葉に彼女はすぐ返答できずにいた……。その言葉から始まり、愛音はライブハウスでバイトをしている椎名立希しいなたきや、癒し系の風貌の長崎そよ、自由気ままに生きる不思議系少女・要楽奈かなめらーならと出会っていく。

ボーカルの高松燈(CV:羊宮妃那)。

ボーカルの高松燈(CV:羊宮妃那)。

ギターの千早愛音(CV:立石凛)。

ギターの千早愛音(CV:立石凛)。

この要素だけ抜き取ると、愛音を中心にしてバンドを結成していく青春もののように思えるが、本作はそう一筋縄にはいかない。燈が「一生、バンドしてくれる?」と返した真意には、彼女が立希、そよたちと1年前に組んでいたバンド・CRYCHICの解散がある。CRYCHICでボーカルを務めていた燈は、解散を機にステージに立つことを辞めていた。そんな燈に、何も知らなかった愛音が声をかけた。その様子を目撃した立希は、CRYCHICの解散を誰よりも悲しみ、未だに引きずっている燈を愛音がバンドに誘ったことに怒りを露わにするのだ。

ドラムの椎名立希(CV:林鼓子)。

ドラムの椎名立希(CV:林鼓子)。

そこからというもの、5人の少女はそれぞれ別の方向を向きながらも、1つの居場所に向かって進んでいく。バンドで目立ちたい。思いの発露の場所として歌を歌いたい。前のバンドを忘れられない。この人の隣にいたい……。決してキラキラしていないそれぞれの目的が入り乱れていく。

キラキラしていない思いが心を突き動かしていく

ここで先ほど述べた物語の軸──「少女たちが感情を吐露すること」を思い返してみたい。CRYCHICの解散を引きずる3人(+α)は、口にこそしないものの「解散」を端に発する思いを抱えている。愛音もまた、胸の中にはバンドで一番目立つポジションともいえる役職・ボーカルに固執する理由がある。そして、一見自由きままに見える楽奈にも、バンドをやる理由がある。そんな彼女たちが出会ったとき、自然と胸の内に秘めていた思いが口からぽろぽろと出ていく。見栄を張りたい、コミュニケーションが苦手、空気を読むのがつらい、周囲に馴染めない……そんなありふれた思春期の悩みとともに思いが吐き出され、その結果として彼女たちはそれぞれが抱えた素の気持ちを知っていく。

ギターの要楽奈(CV:青木陽菜)。

ギターの要楽奈(CV:青木陽菜)。

これまで放送・公開されてきた「BanG Dream!」シリーズは、1つの目的に向かって一致団結する、キラキラとした青春模様を描いてきた。それと比べると「It's MyGO!!!!!」は異色である。キラキラはしていないし、どちらかというとギスギスした展開が続く。毎エピソード、誰かしらの思いが露わとなり、それがほかの誰かの心を突き動かしていく。

しかし、感情が露わになるということは、その少女の素の気持ちにも触れられるということである。なんでも天真爛漫に振舞うわけではなく、このキャラクターも自分たちと同じようにいろんな物事に悩んでいる……そんな姿を目の当たりにすると、心が華やいでしまうのは仕方がないだろう。

ベースの長崎そよ(CV:小日向美香)。

ベースの長崎そよ(CV:小日向美香)。

思いの表現の仕方は、もちろん言葉の応酬だけに留まらない。「BanG Dream!」はガールズバンドものであるから、曲としても燈たちの思いが伝えられるのだ。例えば第7話では、ピンチヒッターとして燈たち5人がステージに上がることとなる。5人揃って初めてのライブであり、愛音がギターのフレーズを間違えたり、燈は苦しくて声が出なかったりと曲のプレイングを通して現在の境遇が描かれる。そして5人のステージの最後に、CRYCHICの「春日影」が披露されたことで、彼女たちは再び別の方向を向き始めることとなった。

異なる思いを抱えている少女たちは、どんなメッセージを音に乗せて伝えようとするのか。また、どのタイミングでどの曲を歌うのか。そして、「春日影」の歌詞が文字通りの意味ではなくつらい過去としてそよたちに刺さっていく中、燈たちはどんな曲を作っていくのか。そこで奏でられる音と紡がれる思いはどういったものなのか? 紆余曲折を辿りながらも燈がステージの上で気持ちを吐き出す瞬間は、とても輝かしい(果たして彼女たちが再びステージに戻ってライブをするのか含め)。

先ほど「CRYCHICの解散を引きずる3人(+α)」と書いたが、5人の迷える少女以外にも、本作を彩るキャラクターが登場する。CRYCHICの解散によって燈たちとは別の道へ向かった豊川祥子とがわさきこ若葉睦わかばむつみがそれだ。また、sumimiという音楽ユニットで活躍する三角初華みすみういかといったキャラクターたちも、燈や愛音たちの関係性をかき乱すファクターとなっていく。彼女たちの思いの吐露からも目が離せない。

豊川祥子(CV:高尾奏音)。元CRYCHICのメンバーで作曲とキーボードを担当していた。

豊川祥子(CV:高尾奏音)。元CRYCHICのメンバーで作曲とキーボードを担当していた。

「It's My Go」は直訳すると「私の出番だ」

本作でシリーズ構成を務める綾奈ゆにこは、「BanG Dream!」シリーズを牽引してきた脚本家である。しかし本作は、「きんいろモザイク」や「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」のような女の子を描いた物語だけでなく、学生バンドの恋愛や成長を描くBL「ギヴン」など、関係性を取り上げさせたら右に出る者がいない彼女の作家性がふんだんに溢れた一作になっているように感じた。ちょっとした少女同士のぶつかり合いややり取り──“ちいさい百合”を点描していくことで、5人の迷える少女たちの関係性は徐々に変化していく。人間らしい悩みに塗れた少女たちの叫びが描かれながらも、その回答はエピソードを重ねるごとに変容していく。その描かれ方が鮮やかで素晴らしいのだ。

「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」より。

「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」より。

なお、本作には前作までに登場したガールズバンド(幼なじみ5人組で結成されたAfterglowや、名門のお嬢様学校・月ノ森女子学園の2年生で組んだMorfonicaなど)も登場する。もちろんシリーズのファンであれば高まる要素の1つではあるが、未見の方でも問題はない。主人公たちに憧れの存在がいて、ちょっと登場する……くらいの認識でもいいだろう。少女同士の激しい衝突が描かれる「It's MyGO!!!!!」を機に、「キラキラドキドキ」がテーマのガールズバンド・Poppin'Partyの物語を観てギャップに驚くというのも面白いかもしれない。

ちなみに、「It's My Go」は直訳すると「私の出番だ」となる。迷子であり、出番を待つ少女たちのダブルミーニングとして、これほど作品にマッチしたタイトルはないだろう。

絡み合っていく人間関係の果てに待つ、思いが交錯する模様。そして自意識を拗らせた思春期特有の衝動。その2つの要素が、女子高とガールズバンドという2つを軸に描かれるのが「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」である。

プロフィール

太田祥暉(オオタサキ)

編集者・ライター。編集プロダクション・TARKUSに所属。学生時代より同人活動としてエンタメ系ZINE・PRANK!を編集し、2018年より商業媒体でライター活動を始める。アニメやライトノベル、特撮を中心に、書籍や記事の編集・執筆を行う。主な著書に「ライトノベルの新潮流」(共著)。

2023年9月7日更新